制作工程 ⑤

制作工程 ①」、「制作工程 ②」、
制作工程 ③」、「制作工程 ④」、から続きます。

前回、少しふれた「磨き」ですが、
実はこれが全工程中、一番ゆううつな作業です。

ぼこぼこの表面…

約30回、塗り重ねた胡粉の層は硬く、
しかも筆目のせいで表面はぼこぼこ・・・
これをつるつるになるまで磨くのはけっこうな力仕事です。

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制作工程 ④

制作工程 ①」、「制作工程 ②」、「制作工程 ③」、から続きます。

「紙貼り」が終わると、いよいよ「胡粉塗り」に入ります。

「胡粉」とは「牡蠣の貝殻の内側の白い部分を砕いて粉末にしたもの」です。
「胡粉」はニカワや水などと配合し、こなし、液状にし、何度も塗り重ね、
さらに磨くことによって、深みのある光沢が出る、大事な素材です。

胡粉作りに使用する道具

この「胡粉作り」は伊東家では「秘中の秘」。
その配合は親から子にのみ受け継がれ、書き留めることも許されません。
季節、またその年の気候によって、微妙に配合を工夫し、
今日まで続いてきました。

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制作工程 ③

制作工程 ①」、「制作工程 ②」、から続きます。

上彫りができた人形は、このあと「胡粉塗り」に入ります。
しかしその前に、地味ですが、欠かすことのできない工程があります。
それが「紙貼り」です。

何か書いてあるのが見えますか?

貼っているのはむこうが透けて見えるほど薄く、
少し揉むだけで毛羽立つようなやわらかい紙。
桐と胡粉をなじませ、つなぐ、大事な役割をはたします。

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制作工程 ②

制作工程 ①」 から続きます。

粗彫り後、半分に割り、中をくりぬき、3か月ほど乾燥させた木地は
もう一度貼り合わせられ、いよいよ上彫りに入っていきます。

上彫り途中の人形

ここからまだまだ細かく彫っていきます。
このあと塗り重ねていく胡粉の厚みを慎重に考慮しながらの作業です。

顔のアップ

目・鼻・口の位置はこの段階で決定され、
これ以降の工程で変更することはできません。
上彫りは作品の仕上がりを決定づける非常に重要な工程。

作品の完成まで、登山でいうと「3合目」ほどの地点です。

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制作工程 ①

御所人形の制作法」にも書いていますが、
「木彫りであること」は初代庄五郎以来、
伊東家の御所人形制作において最も重要なことです。

素材である桐の木

素材である桐の木。
伐採後、20年から30年ほど天日にあて、乾燥させます。
真ん中の髄の部分は使えないので、四分の一に割って保管しています。
風雨に耐えて残った強い部分のみを使用します。

木彫に使う道具

木彫に使う道具です。電動のものは一切使いません。
桐の木は柔らかいので、手で彫らないと歪んだり、割れたりしてしまうからです。

その性質から彫刻家は「桐」という木を素材として用いることはほぼありませんが、
伊東家ではこのあとの工程で塗り重ねていく胡粉との相性を考慮し、
江戸時代より、代々が桐を素材として採用しています。

粗彫り中の人形

粗彫り途中の人形。
これは衣装を着ける予定の人形なので、手は別に彫っています。
完成後にひびが入ることがないよう、
このあといったん半分に割り、中をくりぬき、3か月ほど乾燥させます。

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