制作工程 ⑦

制作工程 ①」、「制作工程 ②」、 「制作工程 ③」、
制作工程 ④」、「制作工程 ⑤」、 「制作工程 ⑥」、から続きます。

「胡粉塗り」と「ぬぐい」を終えた人形たち。
いよいよ、もっとも緊張する「顔描き」を迎えます。

いよいよ顔描き!

制作工程 ②」でもふれましたが、
目や口の位置はすでに「上彫り」の段階で決まっており、
この「顔描き」で位置を変更することはできません。

「上彫り」の時に、その点をしっかり考慮しておかないと、
ここで 「思いっきり」 後悔することになります。

精神集中…

墨を擦りながら、心落ち着かせて精神統一・・・

まず、目から描きはじめます。
筆先に神経を集中して、慎重に・・・
最初は薄い墨から、だんだんと濃い墨に変えていきます。

人と違って小さな人形は1ミリのずれ、
いや、筆のわずか毛先一本のずれや、太さの違いで表情が大きく変わります。
もちろん墨なので、失敗したからといって消すことはできません。

はじめの頃は緊張で手が震えましたが、
最近はようやくそういうこともなくなってきました。

まずは目から…

目を描き終えたら次は眉。
薄い墨を、これも筆の毛先一本を使って何度も描いていきます。

眉は唯一、「顔描き」の段階で位置を決める部分なので、
目や口とのバランスを見ながら、慎重に描きすすめます。

顔が描けました!

最後に赤で口を描きます。

これまでの白と黒だけの世界に赤が入ったとたん、
人形に血が通ったような気がします。
命が吹き込まれた、と感じる瞬間。
うれしい瞬間です。

顔のアップ

最大の難関、「顔描き」が終了しました。

伊東家では御所人形を約一年かけて作り上げるのですが、
その工程中、「一息つける瞬間」というのはなかなかありません。
その数少ない「一息つける瞬間」がこの「顔描き」を終えた瞬間です。

このあと「髪付け」または「毛描き」、そして「衣装付け」が待っています。
作品の完成まで、登山でいうと「8合目」ほどの地点です。

筆いろいろ

ちなみにこの道に入ってからあらゆる筆を買い、試してきましたが、
昨年やっと「この一本」というのを決めました。
悩みに悩んだ末に決めた「この一本」、それは結局、父と同じものでした。

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