京都三大祭のひとつで、日本三大祭のひとつにも数えられる祇園祭。
なかでも長刀鉾は「くじ取らず」といわれ、毎年必ず巡行の先頭を行くことや、
今でも生稚児(いきちご)が乗る唯一の鉾であること、などで人気です。
その長刀鉾の守護神 「和泉小次郎親衡」(いずみこじろうちかひら)像を
現在、衣笠の工房でお預りしています。
久重が昭和60年(1985)に制作して以来、27年ぶりとなる修復のためです。
「伊東家について」 にも書いていますが、
初代「親衡」像は享保11年(1726)、伊東家の祖先「桝屋庄五郎」が制作しました。
しかし昭和29年(1954)、長い間、風雨にさらされ傷みが激しくなってきたことから、
約230年ぶりに十世久重(建一の曽祖父)により復元新調されました。
以後、十世久重作の二代目「親衡」像も真木の天王台で巡行を
見守ってきたのですが、昭和60年(1985)、思いがけない事故が起こりました。
鉾建ての際に鉾が横倒しになり、
その衝撃で「親衡」像の首と手が折れてしまったのです。
その年はどうにか応急処置を施し巡行されたのですが、やはり損傷は激しく、
当代久重が新しく三体目となる「親衡」像を作ることになりました。
久重41歳の時のことでした。
久重は大きな重圧の中、先祖の作ったものに負けないようにと
約30年前に祖父が作った人形の目や口の筆跡をたよりに、
約一年かけて完成させました。
鉾建ての時、自分が制作した「親衡」像が真木に飾られた時は
万感胸にせまったそうです。
それから27年たった今年、「親衡」像はまた修復の時を迎えました。
くしくも建一は今年41歳、久重が「親衡」像を制作した時と同じ歳です。
不思議なめぐりあわせに御縁と大きな責任を感じつつ、修復にのぞんでいます。
ちなみに「親衡」像は
に飾られています。
「親衡」像は祇園祭をよく知る方には「天王さん」と呼ばれ親しまれています。
今年の祇園祭は修復された長刀鉾の「天王さん」にもご注目ください。